遺跡調査の流れ

 建築工事などの途中で地中に遺跡があることが発見された時、工事を中止して発掘作業を行う場合があります。工事は遅れ,事業全体に影響を与える恐れがあります。このような事態を避ける為には,事前に市町村の埋蔵文化財担当部署との協議を行うことが重要になります。

 「埋蔵文化財包蔵地」で建築工事などが行われる場合に,そこに存在する遺跡(埋蔵文化財)が掘り出されるまで、いくつか段階を踏む必要があります。遺跡調査の内容は、調査する場所により異なってきますが、こちらでは遺跡調査のおおまかな流れをご紹介したいと思います。

試掘調査

 建築工事などを始める前に、市町村の埋蔵文化財担当部署との協議の過程で,地中に遺跡(埋蔵文化財)が残されているかいないかを確かめる調査と,周辺の状況などから遺跡が残されていることが確かな場所で,遺跡の範囲・性格・内容などの様子を把握する調査のことを合わせて試掘調査といいます。地上からでは分からない,地下の遺跡様子を確認するために、工事などの対象範囲の様々な場所(面積の5~10%くらいが多い)を試しに掘っていきます。遺跡の存在が確認され,工事内容などから,遺跡を現状で保存することが困難な場合,本格調査に入ります。

本格調査(発掘調査)

 範囲を限定した試掘調査に対して,遺跡を保存することが困難な部分の全体を対象にした遺跡調査を本格調査と言います。

 発掘調査では,まず、測量によって調査を行う範囲を決め,重機を使って表面の土を取り除く作業を行います。表面の土を取り除いたあとは人の手で作業を行います。あまりにも深く重機で掘り進めてしまうと、誤って遺跡を壊してしまう可能性があります。また,土の観察によって元の地形を想定し,その地形に沿って掘る必要があるため、人の手を使って掘り進める方法が最適なのです。人の手で土の色や硬さなどが異なる部分が分かるまで、慎重に掘り進めていきます。

 つぎに,土の色や硬さなどが周囲と異なる部分に、白スプレーなどを使って印をつけていきます。これが建物などの「遺構」と呼ばれる不動産になりえます。周りと色などが違う部分のみを掘り進めることで遺構の形を捉えていきます。

 そして,土を掘り出す作業を終えて遺構の全貌が明らかになったら、記録を取ります。写真撮影、大きさの測定などをして、図面の作成を行います。平面図や断面図は報告書に使われます。写真撮影は平地からだけではなく、やぐらを組んで上空からも撮影されます。時にはラジコンのヘリコプターを使うこともあります。

整理作業

 遺跡から発見されたもの(動産)を遺物といいます。遺物も重要な歴史的資料となり得る可能性があります。発掘された遺物は、まず,付着している土をきれいに落とすことから始めます。遺物が割れたり傷ついたりしないよう、こちらも人の手で丁寧に行われます。

 つぎに,その遺物が「どこから見つかったか」といったことが分かる番号などの情報を1点1点に書き込み(注記),割れた破片の仲間を集めて接合し,元の様子を想像しながら復元します。殆ど接合しないものや,接合しても穴だらけのものが多く,ピースの揃わないジグソーパズルが多数混じっている状態です。そして,復元された遺物の観察・図面作成,写真撮影を行い,最後に報告書を作成して遺跡調査は終了したと言えます。

 調査や前後の研究により重要な価値のある遺跡・遺物であることが判明した場合には,文化財(史跡・重要文化財)に認定されることもあります。

報告書作成

 開発工事などに伴う埋蔵文化財調査は,遺跡(埋蔵文化財)を現状で保存することが困難な場合に行われる「記録保存」の為のものである。その報告書は,こうした行政措置の記録とともに,発掘・整理を通じて得られた学術的な成果を過不足なく記載するものです。

 遺跡調査は全体的に時間がかかります。時間をかければかけるほど費用は嵩んでいくので、スムーズに進める必要があります。

 株式会社ひびきは埋蔵文化財調査コーディネーターとして、遺跡調査全体をスムーズに進めるためのお手伝いをしております。多くの遺跡発掘に携わった経験があるので、お役に立つことが出来ると思います。遺跡調査の際は、是非ご用命ください。